こんにちは!シンガーソングライターのB型さんです。
作詞する時に「出だし」が思いつかなくて困る…とお悩みの方は多いでしょう。
それには、いくつかのパターンがあります。
これを知っておくことで、「出だし」が作りやすくなります。
今回は、歌詞の「出だし」が重要である理由やパターンやその効果、作る時のコツについて解説します。
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もくじ
歌詞の「出だし」が重要である理由
歌詞の「出だし」は、なぜ重要なのでしょうか。私自身、この「出だし」は、一番盛り上がる「サビ」と同じくらい力を入れて考えます。
その理由には、次の2つのことが挙げられます。
歌を聴いてもらえる可能性が上がるから
歌詞の「出だし」は肝心です。なぜなら、その後に続く歌を聴いてもらえるかどうかが、そこにかかっているからです。
歌がただ流れているだけでは、聴き手の心にとどまりません。ですから、そこに言葉を使って“聴き手の心に引っ掛ける”必要があるのです。
あなたは、次のような経験をしたことがないでしょうか。
何気なく聴いていた歌の、あるフレーズに引っ掛かり、そこからその歌をちゃんと聴きたくなった…。
これは、言葉に「引っ掛けられた」状態と言えます。このように、何かしらの言葉に引っかかると、聴き手は「もっと聴きたい!」という気持ちになります。
そのような言葉や表現が、歌の初めとなる「出だし」にあれば、全体を通して聴いてもらえる可能性が高まります。
その意味でも、歌の「出だし」は重要であると言えます。
歌詞全体の輪郭がはっきりとする
良い「出だし」があることで、歌詞全体の輪郭がはっきりとします。これは、聴き手に歌詞の世界をくっきりと想像させることができる、ということです。
例えば、聴き手が歌詞の「出だし」で、「どうしてだろう?」「それは何だろう?」と思うとします。その後の歌の中で、出だしの部分とリンクすることがあれば、聴き手は「なるほど!そういうことだったのか!」と思いますよね。これによって歌詞の世界や理解が深まります。
このように、「出だし」によって想像力が掻き立てられます。その結果、歌詞の世界の輪郭をくっきりと浮かばせることができる、というわけなのです。
歌詞の「出だし」 パターン例
歌詞の出だしには、いくつかパターンがあります。これについて、例を挙げながら解説していきます。
セリフ
1つ目のパターンは「セリフ」から始まるものです。出だしがカギカッコに入るこの形は、非常に印象的です。なぜなら、聴き手は、「どうしてそんなこと言ったのだろう?」とその後が気になるからです。
例えば、「氣志團」というバンドの作品に、『One Night Carnival』という歌があります。この曲は、「俺んとこ来ないか?」というセリフで始まります。
突然そのように語りかけられるので、聴き手は驚きます。このように、「セリフ」から始まる出だしは、非常にインパクトが大きくなります。
また、このセリフによって、歌詞の主人公である人物を想像しやすくなります。その結果、聴き手は歌の世界に入りやすくなるのです。
私の曲にも、この「セリフ」から始まる歌があります。出だしでどのような印象を受けるでしょうか。まっさらな気持ちで、確認してみてくださいね。
この出だしを聴いた感想を覚えておくと良いでしょう。その感想は、セリフから始まる歌を作る時に役立ちますよ。
このように、「セリフ」から始まる出だしは、非常に印象的なものとなります。
心情
2つ目のパターンは、「心情」から始まるものです。先ほど紹介した、カギカッコに入る形ではないけれど、心の声で始まるものです。これも、印象的な出だしになりやすいです。
なぜなら、先ほどの「セリフ」と同じように、聴き手は「なぜそう思ったのか?」という続きの話が気になってしまうからです。
例を1つ挙げてみましょう。
「HY」というバンドの作品に、『366日』という曲があります。この歌は、
”それでもいい それでもいいと思える恋だった”
という心の声から始まります。
おそらく、ここで聴き手は、「どんな恋をしたんだろう?」と思いますよね。この続きが気になるから、聴きたくなってしまう…という効果があります。
この「心情」から始まるものも、聴き手に大きなインパクトを与えることができます。
風景
3つ目のパターンは、「風景」です。これは、見たままの景色のことを指します。
「風景」から歌が始まることで、聴き手は場所や状況を把握することができます。すると、歌詞の中で繰り広げられる物語に入り込みやすくなる、という効果があります。
ここで、1つ例を見てみましょう。
小沢健二さんの曲に、『愛し愛され生きるのさ』というものがあります。
この曲は、次のような出だしです。
“とおり雨がコンクリートを染めてゆくのさ (略) この通りの向こう側 水をはねて誰か走る”
この歌詞から、次のようなことが想像できます。
- 主人公は通り(道)を歩いている
- そこにとおり雨が降り始めた
- 水たまりができた
聴き手の頭に、このような風景が浮かびます。すると、目の前で起こっている出来事であるかのように、聴き手は物語の世界に入りこみやすくなります。
出だしに「風景」を描くのには、このような効果があるのです。
情景
4つ目のパターンは「情景」から始まるものです。「情景」とは、人の心が投影されたような景色のことを言います。つまり、単なる景色のことではないんですね。
これを出だしに描くことで、歌全体の雰囲気を、聴き手に強く印象付けることができるのです。
例を1つ挙げてみましょう。
山下達郎さんの曲に、「硝子の少年」というものがあります。この曲の出だしは次のようなものです。
“雨が躍るバス・ストップ 君は誰かに抱かれ
立ちすくむ僕のこと見ない振りした”
ここでの「雨が躍るバスストップ」は、ただ単に「雨が降っているバス停」の景色について述べているのでしょうか。おそらく、それだけではなく、次のように考えられます。
この歌の主人公である”僕”は、“誰かに抱かれている君”を見て、“立ちすく”んでいる様子です。この時の彼はきっと、晴れた気持ちではないですよね。この主人公の暗い気持ちが“雨”に投影されているのです。
この「心情を投影した景色」、つまり「情景」が歌詞全体の雰囲気を彩っています。
このように、主人公の心情とリンクさせるように景色が描かれていることがあります。それによって、歌全体の雰囲気を、聴き手に強く印象付けることができるのです。
状況
5つ目のパターンは「状況」から始まるものです。これには、「目の前で起こっていること」を説明して、歌詞の世界に引き込む効果があります。
例えば、槇原敬之さんの曲に『冬がはじまるよ』というものがあります。
この歌の出だしは、次のようなものです。
“8月の君の誕生日 半袖と長袖のシャツをプレゼントしたのは”
これに対して聴き手は、「8月は夏なのに、なぜ長袖もプレゼントしたの?」という引っ掛かりを覚えます。そして、歌の中でその理由を知り、「なるほど!主人公はそんなこと考えてたんだね!」と思うわけです。
つまり、「状況」をまず説明し、その理由を歌の中で明らかにしていくという流れです。
このように、「状況」をはじめに描くことで、主人公の気持ちに寄り添わせるような効果が生まれます。
最も主張したいこと
歌詞の中で「最も主張したいこと」が、出だしに来ることもあります。このパターンは、曲の中で一番盛り上がる「サビ」が初めにくることが多いです。
この方法では、「主張したいこと」を聴き手に強烈に印象付けることができます。
例えば、「ウルフルズ」というバンドの曲に『バンザイ』というものがあります。
この歌の出だしは、次のようなものです。
“イエーイ 君を好きでよかった このままずっとずっと死ぬまでハッピー
バンザイ 君を好きでよかった このままずっとずっとラララふたりで”
この部分で、作者の主張したいことが「君を好きでよかった!」であることがわかりますよね。
このように、「最も主張したいこと」を出だしに持ってくることで、それを聴き手にはっきりと伝えることができる、という効果があります。
歌詞の出だしを作るためのコツ
既存の曲の「出だし」を聴き、どのように感じるかに注目する
歌詞の出だしを作る時の1つ目のコツは、「既存の曲を参考にし、自分なりの感想を持つこと」です。
例えば、あなたがグッとくる歌詞の「出だし」に注意してみましょう。その部分を聴いて、あなたはどのように感じ、考えたでしょうか。また、どのようなところにグッと来たのでしょうか。このようなことに目を向けます。
この作業をいくつかの曲でやってみると、自分の好きな「出だし」のパターンが見えてきます。すると、「出だし」のアイデアが浮かびやすくなります。
また、参考にすると良いおすすめの曲に「日本の童謡」が挙げられます。
童謡の歌詞は短いですが、風景や物語が目に浮かぶものが多いです。実際に、童謡を聴くとその風景が頭に思い浮かんでくる、という人は多いでしょう。
このため、童謡は、どのように書けば「想像しやすい歌詞になるのか」を学ぶのに適していると言えます。
このように既存の曲を聴き、自分なりの感想を持つことで、「出だし」のアイデアが広がります。
印象的な言葉や事柄から始める
歌詞の「出だし」を書く時の2つ目のコツは、「印象的な言葉や事柄から始める」ということです。これは、出だし部分に、聴き手を「なぜ?」と思わすようなポイントを盛り込むということです。
こうすることで、聴き手は続きが気になります。すると、曲を聴いてもらいやすくなるのです。
先述した、「出だし」のパターン例に共通することは、「続きが気になる」ということです。そうなると、聴き手は「物語を知りたい!」と思うため、聴き入ってしまいます。
また、その「出だし」が中身とリンクすることで、歌詞に深みが生まれ、感動させることができるのです。
意味のない「出だし」にならないように注意する
歌詞の出だしを書く時に注意したいのは、「全く意味のない出だしにならないようにする」ということです。つまり、「出だし」の部分が、歌詞の中で何かしらの役割を担うようにする、ということです。
このようなことは、普段誰かと会話している時には、意識することが少ないかもしれません。例えば、その日にあったことを話す時でもそうです。次のように、本題とは関係ない話から始めることがありますよね。
「今日暑かったよねー、明日雨らしいよー…でさ、今日駅で変な人がいてさ…」
この場合、「駅で変な人を見たこと」が話の本題のようですね。しかし、出だしは「天気の話」です。これらの話には、特に何のつながりもありません。これを「歌詞」ではしないようにしましょう。
これをやってしまうと、歌詞の内容が薄まります。それによって、歌詞で主張したいメッセージの印象も薄まってしまうのです。
ですから、歌詞の「出だし」にも、本題に繋がる何らかの役割を持たせることが必要なのです。
基本的にルールや正解はない
今回は、歌詞の「出だし」のパターンについて解説してきました。しかし、これらが「絶対的なルール」というわけではありません。基本的に、作詞にルールや正解はないのです。
今回紹介したものは、あくまで、様々な既存の歌詞をパターン分けしているだけです。
ですから、これらのことは“参考までに”知っておきましょう。まずは難しいことを気にせず、自由に書いてみるのがおすすめです。
それが出来上がった時に、「この出だしにはどのような効果があるのか」を考えてみると良いでしょう。
それに、すべての人を感動させる「出だし」はありません。惹かれるポイントは人それぞれですから、当然あなたの作った「出だし」を良いと思わない人もいるでしょう。
その中でも大切なことは、なぜこの「出だし」にしたのかを、自分自身が理解していることです。
ですから、これらのパターンは参考程度に理解しておきましょう。これにとらわれすぎることなく、自由に書いてみてほしいと思います。
まとめ
ここまで、歌詞の「出だし」について解説してきました。
・歌詞の「出だし」が重要であるのは、「歌を聴いてもらえる可能性を上げる」と「歌詞の輪郭をはっきりとさせる」ため。
・「出だし」のパターンには、「セリフ」「心情」「風景」「情景」「状況」「最も主張したいこと」がある。
「出だし」を考えるときの4つのポイント
・既存の曲の出だしで、あなたがどのよう感じるかに注目し、研究してみると良い。
・「出だし」に印象的な言葉や事柄を盛り込む。
・意味のない「出だし」にならないように注意する。
・絶対的なルールや正解はない。大切なのは、「なぜこの出だしにしたのか」を自分自身が理解していること。
これらのことは、「出だし」を作る際に役立ちます。
さらには、感動的な歌詞にするための効果的な「出だし」を作ることができるようになるでしょう。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
B型さん