バンドのライブでリハーサルをやる意味は?流れと基礎知識

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こんにちは!シンガーソングライターのB型さんです。

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ライブの前にする“リハーサル”。

何のためにするのかよくわかっていない、というライブ初心者の人は多いと思います。

私も、初めの頃は何をしているのか具体的に分かっていませんでした。

「練習かな?」と、ただ何となくリハーサル時間を過ごしていたのです。

でも、それには大切な意味があるのです。

今日は、リハーサルの意味と流れ、その注意点についてお話してみたいと思います。

リハーサルの意味は?

ライブ本番前に必ずする“リハーサル”は、略して“リハ”とも呼ばれます。

リハーサルにあてられる時間は、本番の演奏時間の半分~約3分の1。

本番の演奏時間が30分なら、10分から15分程度のことが多いです。

 

設置されている機材は、ライブハウスによって異なります。

様々な機材の中で、アンプ1つをとっても、様々な種類がありますよね。

「このアンプ初めて使う…!」ということもあります。

もしかしたら、機材の故障があるかもしれません。

それらを知らずに本番を迎えてしまっては大変です。

 

また、ライブハウスでの演奏は、普段のスタジオ練習と異なる点が多々あります。

スタジオ練習と同じ楽器や機材を使い、同じ設定にしているからといって、ステージで全く同じように演奏できるわけではありません。

 

ライブハウスでは、自分達だけでライブをするのではありません。

会場内で聞こえる音のバランスを整える“PA”さんや、曲の雰囲気を盛り上げる“照明”さんと共にライブを作るのです。

 

PAさんは“ミキサー”という機械を使って、全ての音をまとめ上げる人です。

このミキサーを使って、全体の音のバランスを整えていくんですね。

「みんなでライブの環境を整えて、良いライブしようじゃないか!」

というのがリハーサルする意味なんです。

ライブハウスとリハーサルスタジオの違い

ライブハウスとスタジオでの練習では、“音の出所”が違います。

これを知っているかいないかで、リハーサルの効果が大きく違ってきます。

その違いを解説していきますね。

リハーサルスタジオ

スタジオ練習では、それぞれの楽器がアンプから音を出していますよね。

ボーカルはスピーカーから出しますね。

ドラムは生音、つまりそのままの音です。

演奏している人は、それらが室内で混ざりあった音を聞いています

ライブハウス

ライブに行ったことがある人は、会場に大きなスピーカーがあるのを見たことがあるかもしれません。

あれは、メインスピーカーといいます。

ライブハウスでお客さんが聞いている音は、“PAさんのミキサーを通ってメインスピーカーから出る音”なんですね。

ミキサーというのは、「PAさんが音のバランスを整える機械」のことで、PA卓(たく)といいます。

全てのパートの音を、一度PA卓に集める→まとめてメインスピーカーから出す、というイメージです。

ライブハウスにあるたくさんのケーブル。いうなれば”音の通り道”。

これらはどこへ繋がっているのでしょうか。

全体の図を見てみましょう。

全ての音がPA卓に繋がっているのが分かると思います。

前述の通り、ライブ会場でお客さんが聞いているのはメインスピーカーから出る音。

なので、ギターやベースアンプから出る音は“自分の確認用”という立ち位置です。

 

そして、ライブハウスならではの機材がもう一つ。

図に”モニター”というものがあります。

このモニターから、すべてのパートの音が出ます。

ボーカルやギタリスト、ベーシストの前にあるコレ。

”返し”とも呼ばれます。

何にも知らなかったころ、テレビに映るモニターを、私は歌詞がカンニングできる画面か何かだと思っていました。笑

 

ギター、ベース、ドラム、キーボード、ボーカル…などすべての音がここから出ています。

出演者は、このモニターから出る音を聞いて演奏するんですね。

「なんでこんなものがいるの?」と思いますよね。

ステージで演奏していると、他のパートの音がほとんど聞こえないんです。

これがないと「合わせて演奏する」ということができないのです。

リハーサルのために知っておきたい「ライブハウスの音の仕組み」

音がメインスピーカーやモニターにたどり着く経路は、それぞれのパートによって異なります

それを理解しておくことで、PAさんとの意思疎通がしやすくなります。

それぞれのパートの音が、メインスピーカーとモニターから出てくるまでの流れを解説します。

ボーカル

ボーカルの音が、メインスピーカーから出る仕組みはこう。

マイク→PA卓で調整→メインスピーカーと各モニター

下図のオレンジ色の線で示したところです。

矢印の方向が音の流れです。

「PA卓で何を調整するの?音を大きくするだけじゃないの?」と思いますよね。

もちろん音も大きくします。

ただ、それだけでは“聞きやすい音”にはならないんですね。

聞きやすい音にするために高音を削ったり、低音を上げたり、ちょっと音質をいじるんですね。

分かりやすい例で言うと、リバーブもそのひとつ。

”リバーブ”とは、カラオケで言うところのエコーですが、これもPA卓でいじった結果なのです。

その後、メインスピーカーと各モニターに送られます。

ギター

ギターの音がメインスピーカーから出る仕組みはこう。

アンプから出る音をマイクで拾う→PA卓で調整→メインスピーカーと各モニター

下図の赤い線で示したところです。

アンプの近くにマイクが設置されます。

これでアンプの音を拾い、PA卓に送ります。

そこで音質などが調整され、メインスピーカーから出てくるという仕組みです。

ベース

ベースは、ギターとは少し違います。

スタジオなら、ベースアンプのINPUTにシールドを差しこみますよね。

ライブハウスでは、この差し込む穴がいつもと違います。

ベーシストさん、注意です。

“DI(ディーアイ)”と呼ばれる機械に差し込みます。

アンプを通した音がミキサーに送られるギターとは違い、直接ミキサーに送るイメージです。

”DI”とは、そのための機械です。

ベースの音がメインスピーカーから出る仕組みはこう。

ベース→DI→PA卓→メインスピーカーと各モニター

下図の青い線で示したところです。

「ギターのように、マイクでアンプからの音を拾うことはできないの?」と思いますよね。

ベースでこれをすると、スピーカーからきれいに音が出ないんです。

ベースアンプから出た音をPA卓に送るのではなく、ベースからの音を直接PA卓に送る。

なので、ベースの場合、アンプから出ている音とメインスピーカーから出ている音が全然違う!ということも起こります。

自分の音のチェック方法については、後述します。

ベースアンプの音をマイクで拾い、DIを通ってくる音と混ぜる→メインスピーカーへ送る

という場合もあります。

いずれにしても、DIは必須です。

 

音を“送る”といいましたが、厳密にいうと”音”を送っているのではないです。

電気信号がうんたらかんたら…なんですが、ここでは省きます!

難しいことはひとまず置いておいて、音の流れとして捉えておきましょう。

キーボード

キーボードの音がメインスピーカーから出る仕組みは、ベースと同じです。

キーボード→DI→PA卓→メインスピーカーと各モニター

シールドは“DI(ディーアイ)”と呼ばれる機械に差し込みます。

「キーボードの音は、客席からしか聞けないの?」と思うかもしれません。

心配ご無用。ステージ上のモニターから聞こえます。

ドラム

ドラムの音がメインスピーカーから出る仕組みはこう。

打楽器のそれぞれの音をマイクで拾う→PA卓→メインスピーカー

下図の緑色の線で示したところです。

スネア、ハイハット、バスドラ、タム、シンバル…とドラムは色々な打楽器が組み合わされているドラム。

便宜上、図ではマイク1つだけで示していますが、実際は複数個を使います。

ドラム全体で演奏したときに良いバランスで聞こえるように、バスドラ、スネア、ハイハット…と1つずつ調整していきます。

ライブ当日 リハーサルの流れ

セッティング表を書く

当日ライブハウスに行くと”セッティング表”や”PA表”と言われる紙が渡されます。

リハーサルの前に記入し、PAさんに渡しましょう。

これを渡しておくと、PAさんとの意思疎通がしやすくなります。

PA表には、色々書くことがあります。

どこにどのパートが立ち、マイクをどのようにセッティングするかというステージの情報。

曲順や曲の時間、MCがどこに入るかという情報などです。

 

また、照明の希望を書く欄もあります。

「照明のこと分からないし…空欄でいいや。」ではもったいない!

 

私も照明の知識がないので、細かく書くことはできません。

でも、こんなふうに書いていますよ。

「明るい感じの曲なので、ポップな感じでお願いします。」

「夕方っぽく、赤い感じで」

 

照明さんも、あなたがどのような曲を演奏するか分かりません。

「静かなのかな?」「カッコイイ感じかな?」「色は何色だろう?」とたくさん考えることがあります。

情報がないまま1から照明を作り出すとなると、難しいですよね。

照明は、曲の雰囲気を引き立ててくれる役割を持っています。

なので、少しでもイメージを伝えておくことが大切です。

セッティング表の書き方は「ちゃんと書けてる?ライブのセッティング表、PA表の書き方」で解説しています。

是非合わせてご覧ください。

セッティングの準備

当日演奏する曲の中からリハーサルで演奏するものを、事前に決めておきましょう

私は、雰囲気や音量など変化があるところを知らせる気持ちで曲を選びます。

・音量や雰囲気が変わる

・エフェクターの使用で大きく音色が変わる

などです。

曲の練習ではないので、1曲まるまる通す必要はありません。

上記のような、チェックしておくポイントとその前後が分かれば良いです。

1番だけとか、2番サビ~ギターソロの終わりまでというような感じです。

 

リハーサルの時間が近づいたら、ステージに持っていくものを準備します。

事前にセットできるものはしておきましょう。

エフェクターボードを持っていく場合は、ギターとアンプ、電源に繋ぐだけ!という状態にしておくんですね。

チューニングやスネアの調整もある程度済ませておきましょう。

 セッティング

時間が来たらスタッフさんが声を掛けてくれます。

ステージでセッティングを始めましょう。

決められたわずかな時間しかないので、手際よく、確実にできるように頑張りましょう。

ギターさんは、スタジオ練習と同じ様にセッティングしていきます。

 

ベーシストさんは、シールドを入れる穴がいつもと違うので注意です!

アンプではなく”DI”に入れてくださいね。

分からなければスタッフさんに聞きましょう。

 

ドラムのシンバルに割れがないか、ハイハットがきちんと開くか、など壊れがないかチェックしましょう。

ボーカルさんは、メンバーの荷物を運ぶのを手伝ってあげてくださいね。

リハーサル開始

ステージ上で機材のセッティングが終わったら、「よろしくお願いします!」とリハーサル開始。

ここからはPAさんの指示に従ってください。

まずはドラム

まずは、ドラムから始まることが多いです。

「バスドラからお願いします。」と言われたら「ドン、ドン、ドン…」といつも叩いているくらいの力でバスドラだけを叩きます。

こんな感じ。

次に「スネアお願いします。」と言われたら、「タン、タン、タン…」と叩きます。

同じようにハイハット、タム、シンバル…と続きます。

この後、「全体でお願いします。」と言われたら、全体を使ったリズムパターンを叩きます。

 

PAさんの沈黙に、「まだ?まだ叩いてていいの?」と心配になるかもしれませんが、

「ハイOKです!」と言われるまでちゃんと叩いててください。

沈黙の間、PAさんは集中して音をチェックしてますからね。

これでドラム単体の音チェックは終わりです。

次にベース

「ベースの音ください。」と言われます。

「音?ください??」と迷っている暇はありません。

何か弾きましょう。簡単な、シンプルなフレーズでいいです。

 

「カッコいいフレーズ弾けないから恥ずかしい!」って思いますよね。

私も思っていました。でもカッコいいフレーズなんて弾かなくていいんです。

技術の発表会ではありません。

大切なのは、きちんと音を出すこと!

本番でやりもしないことをすると、PAさんも自分も困ることになります。

あとは、エフェクターを使って別の音を出す曲があるなら

「(エフェクター名)を使います。」と知らせて、その音も調整してもらいましょう。

その次にギター

ギターも基本的にベースと同じです。

「ギターの音をください」と言われたら、何か弾きましょう。

難しいことをする必要はありません。簡単なコードをジャンジャン弾くだけOK。

ギターは、たくさんエフェクターを使用することがありますよね。

急がなきゃ!遠慮しておこう…と省かず、きちんと全エフェクターの音を調整してもらってください。

最後はボーカル

「声くださーい。」と言われたら、「え!くれって言われても…何て言えばいいの?」って思いますよね。

私はいつも「アーアーアーアー♪」と簡単に歌っています。

こんなふうに。

専門的には、どうやら「ハ行」の音が良いらしいです。

私は知識がなかったために、「ハァッハァッ!ヒィッヒィッ!」と言う人を見て「プッ!」と吹き出してしまったこともあります…。ごめんなさい。笑

でも「アー」でも大丈夫。

正しい方法を知らないで無理して「ハ行」でやるより、「アー」できちんと声を出す方が良いです。

個別の音チェック時の注意点

それぞれの音を確認しているとき、指示されていない音は出さないようにしましょう。

ベースの音をチェックしているのに、ギターが横でジャンジャカ鳴っている…

こんなことがないようにしましょうね。

全体でのリハーサル

「曲でお願いします。」

と言われたら、リハーサルの前に決めておいた曲を演奏します。

しかしここで注意点!

演奏をいきなりはじめても、それがどの曲のどの部分なのかPAさんはわかりません。

なので、「今から3曲目の(曲のタイトル)1番をやります。よろしくお願いします。」と伝えてから始めましょう。

そうすればPAさんも、提出したセッティング表を見ながら「3曲目の1番で音色が変わるんだな。ふむふむ」と思えますよね。

 

また、弦楽器担当の人は客席に降りて演奏してみるのもおすすめです。

ステージの上で聞こえる音と客席で聞こえる音は違います。

シールドに余裕があれば、是非客席からの音も聞いてみましょう。

特にベースの音はアンプからの音と全然違うことがあります。

なので、客席からのチェックは是非してみてください。

リハーサルで気になるところがあれば伝える

もし気になるところがあれば、遠慮せずに言いましょう。

例えばこんな感じ。

・ボーカルの場合

「ちょっと自分の声が聞こえにくくて歌いにくい…」と思ったら、

「ボーカルの返し、少し大きくしてください。」

・ギターやベースの場合

「モニターから聞こえるギターの音がキンキンしてる…」と思ったら、

「ギターの高音を下げてもらってもいいですか?」

 

「どうしたらいいんだろう?でも変だな…」と感じることがあれば

そのまま伝えてもいいです!

「ギターの音がキンキンしてるんですけど…どうしたらいいでしょう?」

みたいな感じでね。

・ドラム

「ベースの音が聞こえず、叩きづらい…」こんなこともよくあります。

「ドラムの返しに、ベースの音もう少しください!」

 

こんなふうに、違和感をPAさんに伝えてください。

リハーサルは”相談”です。

歌いにくい、演奏しにくいと感じるのは、当日のあなたの調子が悪いのではありません。

スタジオと環境が違うからです。

いつもの練習のように、「きちんとみんなの音が聞こえる」状態を作って演奏しやすい状態にする。

そのためにPAさんと相談するんだ、という気持ちで挑みましょう。

リハーサルをするときの注意点

本番と同じように演奏

リハーサルの意味は、「本番、良い環境で演奏できるようにすること」。

「リハーサルだから簡単に弾いておけばいいよね。」

「力抜いてチャチャッととやっちゃおう。」は絶対ダメ!

本番に本気出して、いきなり大きい声出すなんて絶対ダメ!

音の準備が出来ていないと、客席の音も悪くなり、お客さんも聞きづらいです。

PAさんも困ります。「…話が違うぞ!!!」と。

だから、本番のようにきちんと演奏してください。

 

たまに「この曲ちゃんと練習できてないから今合わせとく?」と言う人がいます。

けれどライブのリハーサルは練習の場ではありません。

練習は当日までにやってきてください。

技術の披露大会にしない

また、「俺、こんなこともできるんだぜ!」と腕の披露大会にしないでください。

リハーサルは共演者をけん制する場でもありません。

どんなに技術力が高くても、リハーサルをちゃんとやらないバンドはダサいです。

リハーサルが終わったら

リハーサルが終わったら、アンプと楽器本体、エフェクターの”ツマミ”の位置を必ず覚えておいてください。

これが変わるとリハーサルした意味がなくなってしまいます。

私は、リハーサル後にスマホで”ツマミ”の写真を撮っています。

そして速やかに片づけましょう。

DIに繋いでいるベースやキーボードのシールドは、勝手に抜いてはいけません。

故障の原因になります。

「ベース抜いても大丈夫ですか?」と必ずPAさんに確認してから抜きましょう。

リハーサルの順番

ライブのリハーサル順は、多くの場合”逆リハ”で行われます。

本番出演順の最後から順にリハーサルをしていくことです。

 

出演者が5組いるとして、本番は1、2、3、4、5の順で演奏することが決まっているとします。

その逆、5、4、3、2、1の順でリハーサルすることを“逆リハ”というのです。

 

逆リハで進めると、1番目の出演者のリハーサルが最後になります。

そうすると、リハーサルの後、機材などのセッティングをそのままにしておけばスムーズに本番が始められます。

 

こういうわけで、逆リハが多いんですね。

出演順が最後の方だと、本番までの時間が長くなります。

これが本当に疲れます…。

時間があるからと言って、練習に精を出したり、何かを頑張ったりしない方が良いです。

まとめ

今日は、バンドのライブリハーサルの流れと必要な知識についてお話してきました。

 

リハーサルは、PAさんや照明さんと相談、協力して良いライブをするためのもの。

だから力を抜かずにちゃんとやらなきゃ、気持ちよくライブが出来ないよ。

 

ということでした。

リハーサルでやる一つ一つのことの意味を理解して、素敵なライブにしてくださいね!

是非参考にしていただければと思います。

最後までお読みくださり、ありがとうございました!

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